自然素材にやすらぐ女性建築家の自邸_5
間取り図はこちらです ↓ 螺旋階段を要に、扇状に各部屋が配置されているため、廊下のような「通路にしか使えない場所」がほとんどありません。部屋の戸を開けておくことで視線の抜けが生まれ、外の緑が目に入ります。ドアは開けっ放しにしておくとじゃまになりかねませんが、この家では引き戸が多用されています。壁の中に引き込んでしまえば存在が消えて、必要なときだけ現れるのが、引き戸の優れた点です。「ちょい開け」「ちょい閉め」にも便利ですよね。
階段の空間もとてもきれい。明かり採りの窓には格子がはまっていて、その分、光量が落ちるはずなのですが、反射光が回るせいか、むしろ光の美しさを強く感じられます。この窓は、吹き抜けを通じて階下の玄関にも明るさを提供しています。玄関部分は第1回をご参照ください。
階段自体も、ガラスの引き戸で仕切ることができます。階下にお客さんが来ているときも、家族がプライバシーを損なわれずリラックスして過ごせるようにという配慮であり、冷暖房を効かせたいときにも有効です。開けているときは完全に壁の中に引き込まれます。
こちらは家族室。小さなスペースですが、他の部屋と空間を共有することで、窮屈さを感じることなく、こぢんまりした居心地の良さを感じることができます。大空間も気持ちよいいですが、囲まれ感や「たまり」のある場所にいると、落ち着きますよね。
子ども部屋は今のところ家族室と区切らずに使用されています。床はカラマツ。天井があまり写っていませんが、ガマ貼りで、窓に向かって下る傾斜が視線を外の緑へといざないます。
お子さんが個室を要求する年令になったとき、すぐに引き戸で仕切れるように、レールを用意してあります。これをあとから施工するとなるとたいへんなので、最初につけておくのが正解。ちなみに、ここに入れるための戸はまだつくってないそうです。
木の窓台が気持ちいい!ガラスははめころしで、通風用の板戸が左側に。お子さんはここに腰掛けてマンガを読みふけっているに違いない(勝手な想像です)。今どきは木目シート張りの新建材も多いですが、やっぱり本物の木とは質感が違います。木は経年してもシートが剥がれて見苦しくなったりせず、どんどん味わいが深まります。
一画にはデイベッドが置かれ、本を読んだり昼寝をしたりして過ごせるコーナーに。ここだけ壁が板張り。寄りかかって肌触りを確かめたくなります。右側の小窓の外は、住宅と住宅の隙間を視線がスーッと抜けます。もちろん計算ずくの窓配置。目前に隣家の窓が迫っていたら見たくない窓になってしまいますが、ちょっとした配慮で「眺めていたい窓」になることがわかります。エアコンを華奢なルーバーで覆い、存在感を薄めているのも気が利いています。最近のエアコンは多機能化によりサイズが大きく、機能を損なわずきれいに収めるのが難しいと、設計する人々は頭を悩ませているようです。
次回第6回では、寝室、洗面脱衣室、浴室、和室をご紹介します。
この家の動画は以下で見られます。ていねいに設計・施工された心地よい空間を、よりリアルに疑似体験できます。2階部分は 8:27〜
この家を設計した熊澤安子建築設計室のHPもぜひ。すてきな住宅がたくさん掲載されています。
面積や内外の仕上げ、設備メーカーなどの詳細は、第1回の記事の最後に記載しています。
次回もお楽しみに!
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