動画公開:京町家をグレードアップするフルリノベーション

新しい動画を公開しました。


京都にある古い町家のリノベーションです。詳細は定かではないそうですが、両隣の住戸と壁を共有する町家特有のつくりです。でも、いわゆる「鰻の寝床」と呼ばれるほどは細長くなく、とてもコンパクト。


元は職人が暮らしていたと思われる簡素な町家を、リノベーションで茶室のエッセンスを取り入れ、高級旅館のようなラグジュアリーな空間に変身させました。設計は熊澤安子さんです。

施工はツキデ工務店。無垢の国産材を豊富に使った、腕のある職人さんとともにしっかりした家づくりをされている工務店さんです。撮影中、築出会長が熊澤さんとの打ち合わせでいらして、空き時間に色々と施工中のことなどお話をしてくださいました。


築出会長さんは、建築が好きでたまらないといったご様子で、嬉々としてお話されていたのが印象的でした。茶室にもお詳しく、材やディテールに関してたくさんのアドバイスを受けたと、熊澤さんがおっしゃっていました。座敷の天井には、茶室に用いる竹製の釘が使われているのだとか。築出さんが会社にあったストックを使用したそうです。


「庭座」という縁側空間に腰を下ろして坪庭を眺める熊澤さん……。ほんの小さな外部空間ですが、これがあるとないとでは大違い。手前に写る人影は、見学にいらした建築家の小谷和也さん。熊澤さんのポーズは、小谷さんの撮影に応じたものです。笑



1階には小上がりの座敷があります。下はその出窓。障子の向こうに熊澤さんが祇園でリサーチしたデザインを採り入れたという出格子があります。藁すさ入りの土壁や京唐紙など、隅々まで厳選された素材が用いられています。

耐震性や断熱性も向上。屋根は既存の野地板を表しにするため、いったん屋根瓦を下ろし、断熱材を敷いてからまた戻すというやり方で屋根断熱を行ったそうです。撮影した日は京都特有の酷暑でしたが、室内は冷房が効いてとても快適でした。


2階のリビング・ダイニング。枠回りの仕上がりの美しさ。白木の清冽さと黒々とした既存の梁や野地板との対比が小気味よいです。

隅々まで上質感があり、決して広くはありませんが、家具をhaoandmei (ハオアンドメイ)さんにオーダーして誂えているので、部屋にぴったり。2階は小屋裏の小さな空間ですが、家具で重心を低く抑えたことで落ち着きのある快適性が生まれています。


ダイニングでくつろぐ熊澤さん。円卓は小さなスペースとの相性がいいですね

玄関と一体化した無垢板のスケルトン階段もとても美しいのですが、haoandmeiさんが加工したものを大工さんが組み上げたのだそうです。


プラモデルのように短期間でパパっとつくる家も合理的でいいですが、上質な素材を用いて丁寧に人の手をかけた住まいには、やはり何ものにも代えがたい魅力があることを、体感することができました。一般人には手の届かない世界かもしれませんが……


この事例は、今年のはじめに出版された『時を重ねる家。』に掲載されています。より詳しい情報をお知りになりたい方は、ぜひ書店でお手に取ってみてください。建築書のコーナーにありますが、写真が豊富で内容は柔らかいので、一般の方に抵抗なくお読みいただける本です。間取り図も掲載されています。

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熊澤安子建築設計室のHPはこちら。

ツキデ工務店さんのHPもご覧ください。

住まい逍遥

住宅・ライフスタイルをメインフィールドとして活動するフリーライターの松川絵里が、憧れや共感、好奇心を掻き立てられるスタイリッシュな住宅を、取材・レポートします。動画で美しい空間やライフスタイルを疑似体験するルームツアー・チャンネル「Cozy Houses in JAPAN」を運営。 https://www.youtube.com/c/CozyHousesinJAPAN_housetours