キャッチーなタイトルの裏にあるもの_『すごい建築士になる!』

リオタデザインの関本竜太さんが上梓された『すごい設計士になる!』(エクスナレッジ)をお送りいただきました。ありがとうございます!

これは、建築設計を生業とする人だけでなく、時間管理やチームビルディングなど、全ての人が読んで役立つ優れた「仕事術」の本になっています。


関本さんとの出会いは、もう15年くらい前になるかもしれません。そのときから関本さんに対する印象は、一貫して「仕事のできる人」。設計で住む人を喜ばせるのはもちろんですが、さらに色んな角度から喜びを与えている建築家、だと思っています。


関本さんは、私がYouTubeチャンネルを開設したばかりのときに、3本目のルームツアー動画(関本さんのご自宅)を撮らせてくださった心の広い建築家さんで、感謝してもしきれません。それが以下の動画なので、ぜひご覧ください。2023年6月現在、約32万回視聴していただいています。


本の話に戻ります。

長いお付き合いの中で感じてきた、なぜ、関本さんのメール返信はあんなに早く正確なのか。なぜ、関本さんとの仕事はいつもスムーズなのか、ご著書を拝読してわかったような気がしました。


関本さんの振る舞いを貫くのは「相手へのリスペクト」と「サービス精神」。ご自身の領分をきっちり仕上げることで、相手からも自然に納得感や緊張感ある対応が引き出され、結果のクオリティがあがる。仕事人としてのしたたかさも感じます。


関本さんてやっぱりできる人だなぁ、と唸らされたのは、このキャッチーなタイトルに関してのエピソードを関係者からうかがったときでした。タイトルは、出版社の強い意向で決まったそうです。著者の立場からはなかなか勇気を要する言葉遣いなので、提案されたときには抵抗感があったはず。でも、いろいろ考察を重ねた末に、「餅は餅屋」と手放された。関本さんの謙虚さと潔さ、聡明さが表れたエピソードだと膝を打ちました。


建築は様々な職能の人と協働しないと形にできないものですから、どうしても譲れないところと、サッと手放すところの加減が、難しいのだろうなあ、と、いつも傍目に想像しています。


色々納得しながら読み進める中で、驚いたことがひとつ。関本さんがトレードマークである水玉もようの服を「仕方なく」着ていただなんて……!あれもサービス精神の一貫だったとは、さすがです。


建築費が一気に高騰し、それが定着しそうな日本で、建築設計事務所を構えて食べていくことのハードルは、高くなるばかり。そこを目指す若い方々にとって、とても具体的な情報が書かれているこの本は、良き指南書になるでしょう。

この春、友人の息子さんがアトリエ系設計事務所に就職したので、この本をお薦めするつもりです。

住まい逍遥

住宅・ライフスタイルをメインフィールドとして活動するフリーライターの松川絵里が、憧れや共感、好奇心を掻き立てられるスタイリッシュな住宅を、取材・レポートします。動画で美しい空間やライフスタイルを疑似体験するルームツアー・チャンネル「Cozy Houses in JAPAN」を運営。 https://www.youtube.com/c/CozyHousesinJAPAN_housetours