夫婦+ねこが暮らすマンションのリノベーション_建築家の自邸レポート3

建築家・大内久美子さんのご自邸レポートの3回目です。1回目ではBefore-Afterの間取り図を掲載し、リノベーションのポイントを解説しました。2回目では玄関、リビング、ダイニング・キッチンについて書きましたので、あわせてご覧ください。

今回はワークスペース、水まわり、寝室について。先に1回目に掲載した間取りをチェックしていただくとわかりやすいです。

まずは大内さんのワークスペース。日々の設計業務をここで行っています。リノベ前はキッチンがあった場所で、キッチン設備を撤去してデスクと書棚をつくりました。リビングの近くでありながら、開放と閉鎖のメリハリがうまく生かされています。床材もタイルからフローリングへと切り替わり、雰囲気の違いが明確です。場所によりイメージが変わると、小さなフロアでも広いと感じられるから不思議です。それでいて、統一感もあることが大事。

デスクは、キッチンユニットのワークトップと同じ高さなので、デスクとしてはやや高め。木のハイスツールは、たまたまトーヨーキッチンスタイルのショールームで見つけて購入したものだそうです。横長の窓はそのまま生かされています。

デスクの背面、写真右側の白い面には、洗面・脱衣室やトイレの引き戸が並びます。白で統一されているから、言われないと気付かないほど存在感が小さく、視線が奥の部屋の窓へとスーッと吸い込まれます。

こちらはリビング寄りにある手洗いとトイレ。白い引き戸を開けると手洗いがあり、奥のドアを開けるとトイレです。

キッチンと同じモールテックスで仕上げた手洗器が、人研ぎのような質感でカッコいいのです。職人さんの手の跡がもたらす素材感には、工業的な製品からは得られない価値を感じます。デザイン的な蛇口や、間接照明とも一体化したスタイリッシュなデザイン。来客が使うことを意識したつくりですが、立ち上がりが深いので洗濯物の下洗いなどにも便利だそうです。

袖壁の奥に照明が組み込まれ、石けん置き場も両脇に隠して。排水溝の金物は銅製。

こちらは同じ並びにある洗面・脱衣室。ねこトイレもここに。洗濯機の左側は、寝室側から使う収納にして、デッドスペースなし!

けっして大きくない住戸で、手洗いと洗面台を分けているのも驚きの発想。その代わり、家族用の洗面台は超コンパクト・かつ機能的にまとめています。出口の奥に見える白い扉は収納です。目立たないつくりの収納が点在しています。

こちらは寝室。ワークスペースを経由した奥に位置しており、玄関からも遠くて落ち着きます。バルコニーは、写真右手奥が少し広くなっていて、そこに洗濯物を干すと室内から見えず、よく乾くので重宝しているそう。ベッドは、小上がりを造作してサイザル麻カーペットを敷いたもの。天井には梁があり、そこから低めの窓に向かって傾斜しています。このつくりは圧迫感にも繋がりかねないのですが、横になることが基本の寝室では、逆に安心できるのだそう。物件の弱点を、心地よさに変えてしまうところが、さすが。

壁に埋め込まれた小さな扉は、寝具を入れる収納。洗面所のねこトイレ・収納棚と隣合わせの位置関係。ベッドの頭方向の壁は、下側をふかして(厚みをもたせ)ヘッドボードに。細かいものを置くのに便利ですね。

小上がりの下には引き出しを組み込んであります。

こちらはベッドの足元にあるコーナー。お化粧のためのカウンターの前には窓があり、明るいのです。左側に置かれた古い和ダンスは、ご実家で処分されそうになっていたものをレスキューしたのだとか。手前のイームズチェアも長く愛用しているもの。ビシッとコーディネート!というよりは、ストーリーや愛着のある家具や小物が蓄積され、あたたかい雰囲気を奏でています。お風呂上がりにイームズチェアに腰掛けると窓からの風にスーッなでらるそう。ベッドに入る前に体と心も緩めるひととき、大切ですね。

これで、大内さんのご自邸レポートは終わりです。

以下の動画では、動く視点で空間を疑似体験できますので、ぜひご覧ください。

詳しいデータは1回目の最後に掲載しましたので、参考にしてください。

大内さんが営む建築設計事務所のHPも、他にもリノベーションのすてきな実例が掲載されていて一見の価値ありです!

ご覧いただき、ありがとうございました。次回もお楽しみに!

住まい逍遥

住宅・ライフスタイルをメインフィールドとして活動するフリーライターの松川絵里が、憧れや共感、好奇心を掻き立てられるスタイリッシュな住宅を、取材・レポートします。動画で美しい空間やライフスタイルを疑似体験するルームツアー・チャンネル「Cozy Houses in JAPAN」を運営。 https://www.youtube.com/c/CozyHousesinJAPAN_housetours