動画公開 省エネで夏涼しく冬暖かいナチュラルハウス

新作動画を公開しました。

建築家 新井かおりさん(AtelierBio)のご自邸です。

新井さんは、東日本大震災をきっかけに、暮らしの中で使うエネルギーについて考えるようになったそう。自宅を設計する際は、街中で電力の自給を目指すこと、少ないエネルギーで快適に暮らせることを考えました。

生活に使うエネルギーを減らすため、断熱を厚くし、冬は窓から日射を導き、暖房として利用します。逆に、夏はできるだけ室内に入る日射を遮り、1台のエアコンで家全体を冷房します。

屋根では太陽光パネルによる自家発電を行い、自家消費に利用するとともに、余剰分は鉛蓄電池に蓄電したり、売電したりしています。全館空調でもほぼ自給が可能とのことです。

また、太陽熱温水器や雨水タンクも設置。自然の恵みを最大限暮らしに取り入れる住まいです。太陽熱利用の調理器を用いた調理まで、日常的に楽しんでいらっしゃいます。

高断熱の家は、省エネでランニングコストが低く、室温にムラのない快適な環境が広がります。窓際や廊下、ロフトなど家の隅々まで暑さ・寒さがなく快適なので、スペースを有効に利用できることも大きなメリット。

そのため、ロフトを含む117㎡の空間で、家族4人の暮らしと設計事務所スペースの共存を可能になっているのです。

床・壁・天井に木繊維を用いた断熱材を採用しています。↓

内壁から外壁まで、透湿性の建材を使っていることがポイント。高断熱・高気密のウィークポイントである壁内結露を少なくできるそうです。それでも結露をゼロにすることは不可能で、長年の間に結露による傷みが生じたら、その部分だけ切り取って交換することができるといいます。湿気を吸ったり吐いたりする透湿性を担保しつつ、隙間風をなくす気密性は高く保たれています。

木繊維の断熱材は、まだ国産のものがあまり普及していないそうなので、今後生産量が増えて行けばいいなと思います。そのためには、使いたい思うユーザーが増えていくことが必要です。

冷房は壁掛け式ルームエアコン1台で、暖房はペレットストーブを利用。真夏と真冬の2回、撮影にうかがったのですが、夏はひんやり自然な涼しさで、冬は体の芯からじわっと温もるような暖かさ。高断熱により、建材そのものが熱を蓄えることができ、輻射の効果で適温を体感できるのです。年中湿度が適正に保たれるのも快適性の重要なポイントです。

熱交換換気装置で換気を行うので、冷暖房の熱が無駄にならず、少ないエネルギーで適温を保てます。

印象的だったのは、冬にうかがった際、新井さんが短時間、窓を開けて換気をしていたこと。家全体が温まっているので、室温が多少下がっても寒くは感じないのだということが実感できました。

高断熱・高気密住宅のつくる人工的な環境は、人間の動物的な適応能力を麻痺させる、といった批判もあります。一方で、暮らしてみたことのある人は、年中、健康的に暮らせる実感を語ってくれます。室温が、血圧を始めとする体調に大きな影響を与えることは、公的な研究からも明らかになっており、他の先進国ではスタンダードですが、日本は大幅に遅れをとっています。

北国では人工的な快適さの中で暮らすことが許され、そうでもない地域ではそれをすべきでないとする考え方には、個人的には違和感があります。そうはいっても人間は快適性を求めるもので、スカスカの住宅で大量にエネルギーを浪費してしまうことはわかっています。家がスカスカだからといって、住まい手が自然に親しむ暮らし方をするかどうかは、「人による」としか言えないでしょう。

新井さんは季節ごとに太陽との付き合い方を工夫しながら、クリエイティブに暮らしており、街暮らしで忘れがちな「自然に応答する感性」を、日々研ぎ澄ましています。


太陽熱温水器「エコ作」と おひさま料理レシピ

「Luce.ヒカリノイエ」

設計 AtelierBio一級建築士事務所 新井かおり

https://atelierbio.jp/

所在 埼玉県

竣工 2018年

構造 木造2階建て

敷地面積 100.32㎡

延床面積 96.96㎡(ロフト含116.96㎡)

1階 47.28㎡

2階 49.68㎡

ロフト 20.00㎡

住まい逍遥

住宅・ライフスタイルをメインフィールドとして活動するフリーライターの松川絵里が、憧れや共感、好奇心を掻き立てられるスタイリッシュな住宅を、取材・レポートします。動画で美しい空間やライフスタイルを疑似体験するルームツアー・チャンネル「Cozy Houses in JAPAN」を運営。 https://www.youtube.com/c/CozyHousesinJAPAN_housetours