動画更新:古家具店店主の古家リノベーション

昨日新たなルームツアー動画を公開しました。日本の明治・大正・昭和初期の古家具を扱う「仁平古家具店」「pejite」「汲古」のオーナー、仁平透さんのご自宅です。

元は民藝運動の担い手として活躍した陶芸家・濱田庄司の三男、濱田篤哉(やはり陶芸家)が1980年に建てた自宅で、敷地内には陶芸工房を併設。

購入時は屋根が一部抜けるなど傷みが激しかったそうですが、元々はつくりの良い建物。それまでたくさんの物件を見てきた仁平さんは(「物件巡りは趣味に近い」とおっしゃってました)建物の持つポテンシャルを見抜くことができたんですね。以前、古い店舗をリノベーションした経験も生かされました。

妻の里帆さんは、藪に包まれた古家を「お化け屋敷みたい」と、自分がそこに住むことを想像できなかったようですが、経験豊富な夫を信頼していたそうです。経験のない人は、目の前の状況が与えるインパクトに強く影響されがちですが、経験のある人や建築のプロは見ているところが違うのでしょう。


購入後は大工さんや左官屋さんと相談しながら、自らの設計で舵取りでリノベーションを行いました。天井を取り去って架構を見せ、壁を塗り床を張替え、アルミサッシは木製の古建具に交換。元は昭和な和風の家が、懐かしさのあるシャビーな空間に生まれ変わったというわけです。木製の古建具は、偶然同じサイズのものが必要な枚数、揃ったそう。「なかなかないこと」だとおっしゃっていました。引き寄せ力?


室内には、仁平さんと妻の里帆さんの美意識に叶う、厳選された家具や日用品のみが置かれています。たくさんの古家具や古道具を市場で仕入れる過程で「これは売りたくない!」と感じる逸品だけを手元に残すのですから、羨ましい限りです。

玄関で下駄箱として使われている水屋ダンスや、台所の窓辺の棚など、サイズが測ったようにぴったりの家具も多く、一つ一つ、出会いを重ねてできてきたインテリアなんだなと感じました。家具は今後も、より良いものと出会えば入れ替わる可能性もあるでしょう。


動物好きの里帆さんはヤギやウサギを飼っています。また、身近にある季節の素材を、昔ながらの方法で調理するのがお好きだそうで、気の合う仲間と一緒に台所でワイワイつくることもあるのだとか。

当日、テラスの「おくどさん」で蒸してくださったのは朴葉餅(ほうばもち)。朴葉の独特の香りが餅に移り、豊かな味わいでした。自然に囲まれた環境で伸び伸びすごすご長男と、その健やかな成長を見守る夫妻のあたたかな眼差しを、動画に収めることにも心を砕きました。仁平さん、里帆さん、すてきな時間をありがとうございました。


帰りに立ち寄らせていただいた仁平さんのお店、空間も商品もとてもすてきで、ゆったりとした時間が流れていました。栃木県がメインフィールドですが「pejite」は青山、自宅敷地内の工房で製作されるオリジナルの器のお店「汲古」は丸の内にあるそうです。ぜひ訪れてみてください

住まい逍遥

住宅・ライフスタイルをメインフィールドとして活動するフリーライターの松川絵里が、憧れや共感、好奇心を掻き立てられるスタイリッシュな住宅を、取材・レポートします。動画で美しい空間やライフスタイルを疑似体験するルームツアー・チャンネル「Cozy Houses in JAPAN」を運営。 https://www.youtube.com/c/CozyHousesinJAPAN_housetours